むし歯の基礎知識

そもそもむし歯とは?

そもそもむし歯とは?

むし歯は、むし歯菌が発する酸が、歯のカルシウムを溶かしてしまった状態のことです。むし歯菌は、歯に付いた食べかす(プラーク)を食べて増殖します。そのため、食事の後に丁寧に歯磨きをして、プラークを除去するのが、むし歯予防の最も効果的な方法となります。
ところで、歯は、むし歯菌によるものだけではなく、生きているだけで自然に溶け出していることを知っているでしょうか。これを、歯科用語で「脱灰(だっかい)」といいます。しかしもちろん溶けっぱなしになるわけではありません。脱灰すると同時に、唾液中のカルシウムやリンを取り込んで補充する「再石灰化」を行い、バランスを保っています。再石灰化という言葉は、歯磨き粉等のCMでもよく聞くようになりましたよね。
歯にプラークがたまってしまうと、通常の脱灰に加えて、むし歯菌による脱灰も起こってしまい、再石灰化とのバランスが崩れ、むし歯になってしまうのです。

再石灰化 脱灰

ちなみに、CMなどで「再石灰化を促す」としてキシリトール入りガムなどが宣伝されていますが、歯磨きの代わりにはなりませんのでご注意を。歯の表面が汚れていると、カルシウムやリンが吸収されにくくなるからです。

痛くなくても要注意 むし歯の4段階

歯科の世界では、むし歯はその程度により4段階に分けられます。もっと厳密にいうと、むし歯になりはじめの微妙な段階を含め、5段階となります。歯科検診などで耳にしたことがあるかもしれませんが、むし歯のレベルは「(CO)、C1、C2、C3、C4」という用語で示されます。
「CO(シーオー)」は、むし歯かどうか微妙で、今後むし歯になるかどうか、観察する必要がある状態。Oとは「Observation(観察)」の略です。

痛くなくても要注意 むし歯の4段階

「CO」はむし歯とは言い切れませんが、「C1」「C2」になると、歯の表面が侵されている完全なむし歯。そして、数字が増えるごとに状態が悪いことを示します。
現在、歯科技術が進歩し、早期のむし歯であれば、歯を削らなくても治療できる場合もあります。しかし、ほとんどの場合、むし歯は悪い部分を削り取ったうえで、詰め物や被せ物を施す治療を行います。
歯は健康な状態でも、常に少しずつ溶け、溶けた部分を再石灰化により補充していますが、治療で削った歯は元に戻りません。だからこそ、むし歯にならないためのケアが大切なのです。
もう一つ、注意しておきたいことがあります。むし歯といえば「痛い」というイメージがあるでしょう。そのため「今は別に歯は痛くないし、しみることもないから、むし歯はないはず」と思っている人は多いものです。しかし、これは大きな間違い。むし歯は「C2」以下の段階では、痛みなどの自覚症状がほとんどありません。つまり、再生が不可能となる治療が必要になるまで、気づかないことが多いのです。

痛みが出た時は、時すでに遅し!?

むし歯は「C1」「C2」の状態では痛みを感じないと解説しましたが、その状態がさらに進行するとどうなるのでしょうか。そのお話の前に、簡単に歯の構造を知っておきましょう。歯には、いくつかの層があり、一番外側がエナメル質、その下は象牙質と呼ばれています。そしてその下には歯髄という、神経や血管が集まる部分があります。

痛みが出た時は、時すでに遅し!?

むし歯のうち「C1」は、表面のエナメル質だけが侵された状態。「C2」は、象牙質まで侵された状態です。そして「C3」は、神経と血管まで侵された状態で、この段階になると痛みを生じることが多くなります。
治療法としては「C3」の場合、死んだ神経を除去、消毒したうえで、詰め物を入れることになります。その際、神経を取りやすくするため、残っている歯も除去し、歯根だけしか残さないことが多くなります。さらに「C4」は、歯根を残して、歯が全て溶けてしまっている状態。「C4」になると、ほとんどの場合、完全に抜歯するしかなくなります。

むし歯の治療法

むし歯の治療では、「CO」以外は、ほぼすべてのケースで、詰め物や被せ物を施すことになります。「詰める」「被せる」治療には、様々な種類があり、状態によって選択されます。また、歯を抜くしかなくなった場合も、ブリッジや入れ歯(義歯)、インプラントなど、抜いてしまった歯を補う方法があります。

歯周病の基礎知識

歯周病とはどんな病気?

歯周病とはどんな病気?

歯と歯茎は、健康な状態であれば、隙間なくくっついています。歯周病は、歯周病菌がこの歯と歯茎の隙間に入り込んでしまうことによって起こる病気です。
歯茎の内側では、「歯槽骨(しそうこつ)」という骨が歯を支えています。歯周病菌は、むし歯菌が歯を溶かしてしまうように、この歯槽骨を溶かしてしまいます。
歯槽骨が溶けると、歯を支えることができなくなるため、歯がグラグラになり、やがて抜けてしまいます。仮に歯が健康であっても抜けてしまうのが、歯周病の恐ろしいところです。
むし歯は若い人のほうがかかりやすいのですが、歯周病は逆に、年齢が高くなればなるほど進行しやすいというのが特徴。実は、成人の8割が歯周病を抱えているといわれており、高齢となった時に歯を失う大きな原因となっています。

歯周病の原因は?

歯周病の原因は?

歯周病を知るうえで覚えておきたい言葉として「プラークコントロール」があります。プラークは歯の表面の食べかすからできます。歯磨き等によりこのプラークをきれいに取ることが「プラークコントロール」です。
では、歯磨きをしっかりしていれば、歯周病の心配はないのでしょうか。実はそうではありません。
きちんと歯磨きをして、食べかすがきれいになったとしても、安心するのは禁物なのです。
たとえば、歯医者で正しい歯磨きの指導を受け、時間をかけて磨いても、歯の表面にぬるぬるを感じることがあります。残念ながら、プラークは、歯磨きだけでは完全には落ちないのです。
落とせなかったプラークは、唾液中のカルシウムやリン酸を取り込んで、固まります。このプラークが固くなったものは、歯石と呼ばれます。
歯周病菌は空気に触れると死んでしまいます。しかし歯石ができると、歯周病菌はそこに巣食い、歯茎の隙間の奥へ進んでいきます。それにより歯茎が歯から離れ、炎症を起こし、腫れが生じます。この状態になると重症であり、歯が抜ける等のリスクが高くなります。
歯周病の怖いところは、危険な状態になるまで、自覚症状がほとんど現れない場合が多いこと。気が付いたときには手の施しようがない、ということもあるのです。

歯周病はどうやって治療する?

では、もし歯周病になってしまったら、どのように治療すればよいのでしょうか。
実は、残念ながら、歯周病を完全に治療する方法は見つかっていません。さまざまな治療法が研究されていますが、症状を抑えることはできても、完治させるのは難しいのが現状です。
もちろん、歯周病菌を一時的に除去することはできます。しかし、歯周病菌は誰の口の中にも常に存在している菌。自然に感染し、再び増殖してしまうのです。

歯周病はどうやって治療する?

歯周病により歯茎と歯が離れてしまうと、ある程度は引き締める方法はあっても、再びぴったりとくっつけることは困難です。その状態で歯周病菌が増殖すると、簡単に隙間に入ってしまいます。
歯周病治療の基本は、定期的に口の中をきれいにすること。プラークは、丁寧に歯磨きをしても、完全に取り除くことはできませんので、定期的に歯科医院に行き、専門の器械を使ってプラークを除去してもらうのが最も効果的です。